次式で定義される係数を切欠係数βといいます。
切欠がある部分の最大応力は公称応力に応力集中係数αを乗じて求めるか,有限要素法を使って求めます。有限要素法を使って求めた最大応力と疲労強度を比較して,疲労破壊の有無を予測する方法がとられることがあります。この方法は,「βがαと等しい(α=β)」という仮定を前提にしています。
しかし,この方法は応力集中があまり激しくないとき(軟鋼の場合α≦2.5,合金鋼の場合α≦3.5のとき)は,最適な設計解を与えますが,応力集中が激しいとき(軟鋼の場合α>2.5,合金鋼の場合α>3.5のとき)は,オーバースペック気味の設計解を与えることになります。図1は鋼のαとβの関係のイメージです。文献1)にはより詳しいデータが載っています。軟鋼の場合αが2.5以上になってもβは2.5にとどまっています。βを2.5より大きくする必要がないのです。合金鋼の場合は,αが3.5以上になってもβは3.5にとどまっています。α>2.5ないし3.5の場合,β<αとなって,有限要素法で求めた応力を使用応力として採用すると,必要以上の大きさのβを採用することになり,より大きな形状になったり高強度な材料を使用することになったりして不経済な設計になります。
このような場合は,使用応力として公称応力ないしはホットスポット応力を採用して,β=2.5ないし3.5として設計すると,無駄のない設計をすることができます。公称応力ベースの疲労評価のところで説明します。
1)日本機械学会,疲労強度の設計資料 Ⅰ 一般,寸法効果,切欠効果,(S63)
仮想仕事の原理 を追加しました。