このサイトでは,CAEのひとつである有限要素法を用いた解析とその結果の解釈に必要なアイテムを解説します。材料力学は重要なアイテムのひとつです。材料力学のすべてを述べることは私には無理ですが,CAEに特化した材料力学のアイテムにスポットを当ててやさしく解説します。
材料力学(strength of material)は,機械工学の四力学(熱力学,機械力学,流体力学,材料力学)の一つで,固体の力学と材料学を組合せて,理論と実験によって機械や構造物の強度設計を目的とする学問ですが,狭義では構造物に荷重が加わったときの変形や応力を求める学問であります。構造物に作用する荷重がわかっただけでは,それが荷重によって破損(永久変形や破壊)するかどうかはわかりません。破損の有無は破損を起こす原因の強さ「単位面積あたりに作用する力である応力」によって評価するところがポイントです。
狭義の材料力学では,下記アイテムを取り扱います。
棒に発生する応力とその伸び
棒に発生するせん断応力と変形
はり(細長い棒)を曲げたときに発生する応力とその変形
軸(断面が丸い棒)をねじったときに発生するせん断応力とそのねじれ角
狭義の材料力学で求まる応力は公称応力(nominal stress)です。ここでいう公称応力とは応力集中による応力増加分を含まない応力のことです。応力集中を考慮していない応力だからといって用途がないわけではなく,とても価値のある応力です。
実際の構造物では,疲労破壊は一般に一様断面部から起きるのではなく,段や切欠きなど形状の複雑な場所を起点として起こります。そのとき生じる局所的な最大応力(応力集中を考慮した応力)は公称応力に応力集中係数αを乗じて求めるか,有限要素法によって求めます。それと材料の疲労強度を比較して疲労破壊の有無を予測します。この方法は応力集中係数αが2~3より小さいときは有効ですが,それより大きいときは過小評価してしまいます。つまり,余裕のありすぎた設計となってしまいます。このような場合,公称応力ベースの疲労評価を行います。ここでは公称応力と切欠き係数βを用いて疲労破壊の有無を予測します。以上のように公称応力は疲労破壊の有無の予測に大いに役立つパラメータです。
それでは,基本である応力から説明していきましょう。
仮想仕事の原理 を追加しました。