剛体変位の説明の前に変位拘束境界条件の記号の説明をします。
X方向拘束の記号を図1に示します。三角形と二つの丸で表現します。丸がコロであると解釈して。転がっていると考えればよいと思います。
図2は,長方形の左側の辺のX方向変位を拘束し右上に-Y方向の荷重を加えた場合です。長方形は際限なく下がり続けますね。これが剛体変位の例です。有限要素法ソフトは,「Y方向の変位が許容値を超えました。」とか「ピボットが非常に小さくなりました。」などのエラーメッセージを出力して異常終了したり,変位がべらぼうに大きな値として計算結果を出力したりします。
有限要素法ソフトの中ではどうなっているのでしょうか。有限要素法詳細では,有限要素法は連立方程式を解いていると説明しました。連立方程式を解くには,方程式の数と未知数の数が一致していなければなりません。しかし剛体変位が生じる場合,未知数の数より連立方程式の数が少ないのです。よって,解を得ることができないのです。
図3は長方形の下辺のY方向変位を拘束した場合です。今度はY方向に際限なく動くことはありません。しかし,長方形がX方向にどれだけ移動していても答えになりえるので,これも剛体変位となります。
図4は長方形の左下の点のX方向変位とY方向変位を拘束した場合です。今度はX方向にもY方向にも動くことはありません。しかし,長方形が左下の点を中心として回転してしまい,これも剛体変位となります。
以上のように剛体変位が発生すると,有限要素法で変位や応力を求めることはできません。上述した例は二次元問題で説明したので,運動の自由度は,①X方向並進,②Y方向並進,③XY平面内の回転で,剛体変位を避けるためにはこれら3つの運動を拘束しなければなりません。解析の前に頭の中で①②③を思い浮かべて剛体変位がしないことを確認してください。
三次元問題での運動の自由度は,①X方向並進,②Y方向並進,③Z方向並進,④X軸周りの回転,⑤Y軸周りの回転,⑥Z軸周りの回転です。計算の前にこれら6つの運動をしないことを頭の中で確認してみてください。私の経験では,有限要素法ソフトによっては剛体変位が生じていてももっともらしい答えを出力するものがありました。しかしこの答えを信用することはできません。剛体変位が生じていないか確認する習慣をつけましょう。
仮想仕事の原理 を追加しました。