機械や部品には振動に関して共振点が複数あります。共振点での共振周波数を固有振動数と言い,共振状態での変形形状を振動モードと言います。片持ちはりの固有振動数と振動モードの例を図1に示します。
モード1 169[Hz] モード2 1059[Hz] モード4 2956[Hz]
図1 片持ちはりのモーダル解析結果
モーダル解析では固有振動数と振動モードが計算されます。節点数がN個の場合,固有振動数と振動モードは3N組(自由度の数だけ)存在しますが,有限要素法ソフトは指定した数ないしは指定した振動数範囲の固有振動数と振動モードを出力します。
モーダル解析は線形解析です。摩擦あり接触,弾塑性材料,大変形問題には対応しておりません。
どこも固定していないモデルをモーダル解析すると,0[Hz]ないしはほぼ0[Hz]の振動モードが6個出力されます。これらは,X方向平行移動,Y方向平行移動,Z方向平行移動,X軸回転,Y軸回転,Z軸回転の剛体変位で,弾性変形による振動ではありませんので検討には使えません。
節点数Nの有限要素法モデルがあるとします。節点1のX方向変位をx1(t),節点1のY方向変位をx2(t),節点1のZ方向変位をx3(t),節点2のX方向変位をx4(t),節点2のY方向変位をx5(t),節点2のZ方向変位をx6(t),...,節点NのX方向変位をxn-2(t),節点NのY方向変位をxn-1(t),節点1のZ方向変位をxn(t)と表記します。nはn=3Nで自由度数です。
変位ベクトル{x(t)}を次式で定義します。
減衰を考慮しない多自由度系の自由振動の運動方程式は次式となります。
ここで,[M]は質量マトリクス,[K]は剛性マトリクスです。
上式の解は次式のようにおくことができます。
これを(2)式に代入すると次式となります。
上式を満足するωと{ψ}を求める問題は一般固有値問題と呼ばれています。{ψ}={0}という解は静止状態を表していて振動問題としては興味のない解です。そこで{ψ}={0}以外の解を求めます。このためには係数行列式がゼロでなければならないので次式が導かれます。
[M]と[K]が実数対称正値マトリクスであれば自由度数n(マトリクスの大きさn)個の固有値(固有角振動数)ω1,ω2,...,ωnが求まります。r番目の固有角振動数ωrをr次の固有角振動数と呼びます。有限要素法ソフトではωrを2πで割って固有振動数fr(単位は[Hz])として出力されます。
各ωrに対して,(4)式を満足する以下に示すベクトル{ψ}rが求まります。
{ψ}rをr次の固有ベクトルないしは振動モードと呼びます。
振動モードの大きさは絶対的なものではなく,各節点間の相対的な関係であって無次元量であります。よって有限要素法ソフトが出力する振動モードは以下に記すような基準化がされています。
(A)振動モードのベクトル長を1とするため,次式を満足するように基準化する。
(B)後述するモード等価質量が1になるように基準化する。
モーダル解析の結果の変位は実際の振動変位ではなく,振動形状を表現するためだけの値です。
r次の振動モードについて次式で定義された量mrはモード等価質量,krはモード等価剛性と呼ばれています。
上述した固有角振動数ωr,振動モード{ψ}r,モード等価質量mr,モード等価剛性krはモーダルパラメータと呼ばれています。
1)大久保信行,機械のモーダル・アナリシス,中央大学出版部,(s57)
2)ものの揺れ方
仮想仕事の原理 を追加しました。